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精神疾患

『統合失調症がやってきた』松本ハウスが講演会で教えてくれたこと。

松本ハウスという芸人さんを知っていますか?

ボキャブラ天国というお笑い番組で大ヒットして大活躍していた芸人さんです。それがとあるある日、長期の休業に入り、しばらくメディアの前に姿を見せませんでした。それがなぜだか、ご存知の方はどれだけいらっしゃいますか?

実は松本ハウスのボケ担当、ハウス加賀谷さんが統合失調症の治療をしていたせいなんですね。

そんな松本ハウスが講演会をするとのことで行ってきました。そこで包み隠さずお話してくれた、病気のことや相方松本キックさんなどのお話を聞いて感じたことを率直にまとめました。

統合失調症ってなに?

まず病気の説明から入りますね。

統合失調症は100人に1人がかかると言われている精神疾患のひとつです。大きく分けてふたつの代表的な症状があります。

居ない人の声が聴こえる『幻聴』、居ないはずの人の姿などが見える『幻視』などの幻覚をはじめとし、「スナイパーに狙われている」「私は大統領だ」「アメリカから電波が飛んできて操作されている」「自分の考えが抜き取られてしまう」「誰かに操られている」などの妄想などの活発な陽性症状や、その反対に何の気力も起こらず寝たきりとなる、喜怒哀楽が乏しくなる、誰ともコミュニケーションが取れずに引きこもってしまうなどの陰性症状があります。その他には記憶力の低下、集中力の低下、判断力の低下など様々な症状があります。

万が一発症した場合はすぐに精神科へ行き、薬を処方してもらいます。薬で幻覚・妄想を抑えることはできますが、よっぽど陽性症状がひどい場合は入院での治療を勧められる場合もあります。

少し良くなったからといって勝手に薬をやめてしまうと再発リスクが非常に高まってしまい、下手すると症状が悪化し、入院せざるを得ない状況になる場合もあります。

統合失調症|みんなのメンタルヘルス

松本ハウスのハウス加賀谷さんは、そんな統合失調症を中学2年生の頃から発症していたといいます。そんな加賀谷さんの病歴を次でザックリとまとめてみます。

発症、入院…そして復帰へ

ハウス加賀谷さんが発症したのは中学2年生の頃、『加賀谷くん、臭い』という幻聴が聞こえたのが始まりだったようです。みんなに迷惑をかけていると思い、高校に進学せずにホームレスになろうと真剣に考えていたといいます。

『臭い』という声が幻聴だと気付かず、実際にワキガだと思い込んで手術までしたそうです。

そして高校に入っても声は治まらず精神科を受診して統合失調症と診断され、障害をもった人たちの入るグループホームに入所。その頃からお笑いが好きで、たまたまホームに置いてあったオーディション雑誌を見つけ応募したら合格。そこで松本キックさんと出会います。

ふたりでコンビを組み、漫才をするようになるのですが、当時のお笑い番組に出演して大ヒット。休みがないくらい大忙しとなります。

しかしそれと同時に自己判断で服薬をやめてしまい再発。7ヶ月間入院することになり、復帰を決意するまでに約10年間、治療やリハビリに専念したそうです。

相手のことを知る大切さ

ふたりがまるで会話をしているかのような講演会を聞きながら、松本キックさんのハウス加賀谷さんに対する接し方について、思わず声が出てしまうほどの思いで聞き入ってしまいました。

例えばあなたの周りの人に、実は精神科にかかっていて毎日薬を飲んでいると告白された時、あなたはどんな反応をすると思いますか? もしくは、どんな反応をしたことがありますか?

当時ふたりが出会ったのは10代後半だったようですが、松本キックさんは加賀谷さんに対して、分からないことを聞いたそうです。

『それってどんな病気?』

『どんな症状があるの?』

人は知識不足による固定観念から偏見を起こします。その固定観念はメディアの報道や教育により作られてしまった障害者などに対するマイナスの印象ですね。

それを松本キックさんは無意識だったかもしれませんが、まず相手のことを知ることから始めたわけです。これはそう簡単にできることではないと思います。

「精神科」と聞くだけで『えっ』となる人が多い中、加賀谷さんに対して特別な感情を持たず、疾患のことをいろいろ教えてもらったそうです。

それこそ統合失調症に関しては、症状や幻覚・妄想の内容も人それぞれ違いますので、ハウス加賀谷さんだけの症状を聞くことでサポートもしやすくなるんですよね。

またそれらの症状を用いたネタをやるのはどうだろうか、と提案したのも松本さんです。この講演会でもネタを見せて頂きましたが、症状を盛り込んだネタを見せて頂いて大変面白かったです。

成功体験を増やそう

ハウス加賀谷さんが言っていました。

すごく売れてた時をA、入院してから復帰までがB、復帰後はAではなくCだ

コレ、すごく良いことを言っているんですが、どんな意味があるのか分かりますか?

入院してリハビリを経て復帰しても、また絶頂期だったAのように振る舞うことはできない。台本も覚えられない、呂律も回らない…そんな中Aのように振る舞うことはつまり、自分の体に鞭を打って無理やりやらなければならない、ということ。それって体調を崩してしまうリスクがとても高いですよね。

最初は加賀谷さんもこのことに気付かず、3年目にしてようやく分かったといいます。

できないことはできない。だから、AではなくCとしてやっていくことが大事、というわけなんです。

私たちもそうですが、過去の栄光を10年経った今でも出来るんじゃないかと夢見ているかもしれませんが、老化や病気、環境など様々な理由でできないことが増えたかと思います。それにいつまでもすがるのではなく、無理なものは無理だとそこは潔く諦めましょう。

できないことを無理して頑張るよりも、今できることを積み重ね、成功体験を増やそうということです。私はハウス加賀谷さんのこの言葉にとても胸を打たれました。

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書籍も出版している

私も講演会の最後に買わせて頂きましたが、松本ハウスは2冊の本を出しています。

こちら『統合失調症がやってきた』は2013年に発売。

そして2冊目となる最新版『相方は、統合失調症』という本。こちらは2016年に販売されています。

私は松本さんの視点で読みたいと思い、2冊目を購入しました。そしてバッチリとサインも頂きました(笑)

私が「ニコちゃん(マーク)も描いてください!」って頼んで、お二人にひとつずつニコちゃんマーク描いて貰ったんですが、ハウス加賀谷さんが「ねこちゃん!? ねこちゃん…描けるかなぁ」と本気で悩まれる姿が可愛らしかったです(笑)

最後には写真も撮らせて頂けました! とてもいい思い出作りができました。

まとめ

復帰をされてからは、テレビだけでなく様々な講演会等に引っ張りだこな松本ハウス。

精神疾患を抱えながらもこうやってメディアに出ているハウス加賀谷さんは、日本中の障害を抱えた方の目標でもあり、輝く星のようなイメージですね。

ですが、ハウス加賀谷さんも言われていましたが、必ずしもみんなが同じように回復するわけではないということ。

薬やリハビリの内容も個人差がありますし、治療期間も人それぞれです。自分に合ったやり方を、主治医の先生と相談しながら見つけて欲しいということ。またハウス加賀谷さんは主治医とあまり話しができなかったときは、看護師さんなんかに話をすることもあったそうです。

今医療機関には、医者や看護師だけではなく、薬剤師、作業療法士、理学療法士、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などたくさんのコメディカル(専門職)もいます。そんな方々に相談することも強くお勧めします。

大変勉強になる講演会でした。松本ハウスのお二方、本当にありがとうございました!
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