障害年金の申請を行うときに、絶対に立ち塞がる大きな壁があります。それは、病歴・就労状況等申立書(※以下、申立書に統一します)。
主治医に書いてもらう診断書とは別に、自分で自分の病歴や就労歴をまとめたものを作成しなければいけません。それはもう皆様必死に作成されています。
そこで今回は、そういった皆様の少しでもお手伝いになればと、実際に私が教えている申立書の書き方などを全てここでさらけ出そうと思います。
書き方だけではなく、例文もあります。たぶんね、例文がある方が断然分かりやすいと思いましたので作りました。ぜひぜひ参考にしてみてくださいね。
※ここでは精神科に通院している方を対象として記事を書いていますが、身体や知的で申請される方でも参考にして頂ける書き方などをご紹介しています。
Contents
病歴・就労状況等申立書の用紙
年金事務所、もしくは役所でドサッと渡される書類の中に、こんな書類が混じっているかと思います。


A3サイズの大きな両面の用紙です。表面の上に、でかでかと『病歴・就労状況等申立書』と書かれてあります。
これは正直、人によってはとってもしんどい作業になりますので、体調と相談しながら作成していきましょう。自分のしんどかった歴史を振り返って文字に起こすので、中には申請を断念した方もいるくらいです。無理のない範囲で進めていきましょうね。
それでは準備ができましたら、早速表面から始めていきましょう!
傷病名、発病日、初診日

まずは申立書の上部からいきます。そこには傷病名、発病日、初診日と書かれていますね。まず一般的に何を書けばいいのかを説明します。これは発達障害か、それ以外の病名で書き方が異なりますので、まずは発達障害以外の障害についてを記載します。
発達障害以外の病名の場合
- 傷病名:今のあなたの病名です。これは主治医の診断書と合わせた方が良いので、主治医に病名を何と書けばいいのか聞いちゃいましょう。間違っても、自分の見立ての病名を書いてはいけません。
- 発病日:ここには具合が悪くなった日を書きます。ハッキリと日付を覚えている方は少ないと思いますので、【平成〇〇年〇月頃】でもOKです。
- 初診日:一番最初に初診でかかった病院の初診日を記載します。ここの日付は自然に、発病日よりも後になるはずです。日付が合わない方はどちらかを見直してください。ここは【頃】は使わず、正確な日付を書きましょう。
それでは次に、発達障害の方の書き方をご紹介します。
発達障害の場合
発達障害は、生まれつきの疾患とされています。もし主治医の先生と相談して、発達障害で申請するとなれば、発病日や初診日は以下の様に書いてください。
- 発病日:生まれつきとされているので、ここはあなたの誕生日を書いてください。
- 初診日:ここは通常通り、一番最初にかかった病院の初診で大丈夫です。
障害年金における初診日はとっても大事です。申請するにおいて、常に付きまといますね。
申立書まで進んでいる方は、恐らく問題ないかとは思いますが、念には念を。ここでもう一度、初診日についておさらいしておきましょう。

それではその下の箇所に移りましょう。
発病したときの状態と発病から初診までの間の状況

その下は1~5まで枠の中に番号がふってあると思いますが、その【1】をご覧ください。【1】に関してだけ、他の枠と違うルールがあります。
それは、発病したときの状態と発病から初診までの間の状況を書くということ。もっと分かりやすく言うと、発病のきっかけから初診に至るまでの経緯を書いてください、という枠です。
どんな出来事があって、精神的に調子を崩してしまったのかを具体的にまとめていきます。よってここは【受診していない】に〇が付くはずです。
また書き方ですが、少しコツがいります。【1】に限らず、【5】まですべて共通のポイントになりますので、まずそれを押さえておきましょう。
- 内容は具体的に書く。
- 精神で申請をするので、内科的疾患のことを書き過ぎない。
- できるだけ枠内にたくさん書く。
それではひとつずつ解説をしていきます。
内容は具体的に書く
次の例文を見てみましょう。
仕事でうまく行かなかった。通院は毎日忘れずに行って、薬を出してもらっていた。職場内で異動があり、営業部から事務に移った。環境が良く、何とか仕事ができている。
この書き方だと事柄をつらつらっと書いているだけなので、何がしんどくて何が大変だったのか全く審査してくれる先生に伝わりませんよね。更に最後の書き方だと『仕事できてるじゃん!』と判断されてしまう可能性もあります。
具体的に作成してほしい理由は、仕事や私生活に、精神的な症状がどれだけ影響していたのかを書いて欲しいためです。そしてできるだけ、しんどかったことだけを書いてください。いいことを書いてしまうと、年金が通りづらくなってしまう可能性もあります。
精神で申請をするので、他科疾患のことを書き過ぎない。
例えば精神で申請をするにも関わらず…
〇〇内科で糖尿病と診断され、通院を続けている。食事の管理が大変で、運動はあまりできていない。糖尿病の薬は〇〇を飲んでいる。
と糖尿病について書いてしまうのはおかしいですよね。
でも例えばこれが、糖尿病が原因で精神的に調子を崩している人であれば書いてしまってOKです。ちなみにその場合の書き方はこちら。
〇〇内科で糖尿病と診断され、ショックが大きく寝込んでしまうようになる。大好きな食べ物を摂ることができないストレスで毎日泣いて過ごし、死にたいという気持ちになることもあった。
これだとOKです。精神的な症状が書かれているのがお分かり頂けますか? 他科で診断された病名で、精神的に不調となった場合は、どんな風に調子を崩したのかを書けば問題ありません。
できるだけ枠内にたくさん書く。
『添削してくれ』と申立書を持ってこられる方の中には、大きな字で2~3行しか書かれていない方もいらっしゃいます。
ですが残念ながら、「これじゃあ少なすぎる!」と私は指摘しちゃいます。恐らく私が言わなくても、窓口の方から『ダメ』って言われてしまう可能性は高いです。
できるだけ枠内いっぱいに書きましょう。そうすると審査をする方にとっても、あなたのこれまでの困り感が伝わりやすいと思います。
それでは上記を踏まえて、私が作成した例文を見てみましょう(発達障害以外の場合)。
※すべて架空の内容です。

どうでしょうか。イメージはだいたいこんな感じです。もちろん、これ以上小さい字で書いて頂いてもOKですよ。
発達障害の方は、この枠に出生時から初診までの様子を書いていきます。生まれてから初診でかかるまで、どんな発達障害の特徴があったのかをまとめてみてください。
ちなみに【まで】の日付は、初診日の前日の日付を入れます。平成10年11月11日を初診だとすると、【平成10年11月10日】と書きます。すると時系列がキレイに並ぶはずです。
それでは次にその下の【2】以降の書き方を見ていきましょう。
期間の状況

画像にも書きましたが、こちらもいくつかポイントがあります。
- すべての枠を3~5年で区切る。
- 受診していない期間は正直に書く。
- 各疾患の特徴を書く。
これ以外のポイントは、先程上げたポイントと同じです。それではひとつひとつ見ていきましょう。
すべての枠を3~5年で区切る
これはだいたいで大丈夫なんですが、一般的には3~5年で区切るといいと言われています。例えば人によっては、
・平成10年〇月〇日~平成12年〇月〇日 A病院
・平成12年〇月〇日~平成13年〇月〇日 B病院
のように、3年の期間内に2か所の病院に通院されている方もいると思います。この場合は枠を分けてもいいですし、ひと枠にふたつの病院のことを書いてもOKです(同枠に2ヵ所書く場合は、医療機関名のところに2つの病院名を書きましょう)。
『絶対こうしなさい』という分け方はないので、当時の困り感が強くたくさん書けそうだという方は分けてもいいと思いますし、なかなか書くことが見つからない場合は一緒にしちゃって大丈夫です。
また中には、
平成10年〇月〇日~平成20年〇月〇日 A病院
など長期にわたって同じ病院で治療を継続している方もいますよね。
そんな方は、ひと枠で10年分を書く方法もありますが、5年ずつ分けて書いた方が審査員に当時の情報をより多く伝えることができますので、そっちをお勧めします。
受診していない期間は正直に書く
次に受診が中断になった、一時的に回復した方などが通院をしていない間の書き方です。これは嘘を書くわけにはいけませんので、そこは正直に【受診していない】に〇をしましょう。
通院していない期間はそれだけでひと枠使った方がいいです。できるだけ通院していた時期と混ぜないように、別枠で書きましょう。
問題はその書き方ですが、『元気に遊びまわっていたぜ、いえ~い!』なんて書けませんので、なぜ通院をしていなかったのか、この間精神的な不調はなかったか、を記憶を頼りに書いてみてください。
各疾患の特徴を書く
あとは各疾患の特徴があると思いますので、自分の病歴を振り返って頂き、書けそうな症状があれば盛り込んでいくといいでしょう。
- 統合失調症:幻聴、幻視、妄想はあったか。
- うつ病:抑うつ状態、気分の落ち込みはどうだったか。
- 躁うつ病:テンションの上がり下がりが生活に影響していなかったか。
- 発達障害:コミュニケーション、独特の価値観はどうだったか。
ザックリ言うとこんな感じです。これ以外にも、どういったことが生活に影響していたかを思い浮かべながら、私が作成した例文をご覧ください。
※すべて架空の内容です。

語彙力はスルーしてください。こんな感じの申立書が出来上がればOKです! ここらでいったんお茶やコーヒータイムをとってくださいね。これだけでも結構疲れた方も多いはず。
それではゆっくり休んだ方から、今度は裏面にいきましょう!
〔※2018/3/3 追記〕【3】と【4】の時系列が繋がっていないことに気付きました、すみません。
【3】は平成11年7月11日~平成12年10月10日でOKなんですが、【4】の開始は平成12年10月11日~ になります。そうすると綺麗に時系列が繋がると思います。
例文ではなぜか平成12年10月20日になっているので、混乱してしまった方もいるかもしれません。失礼しました。
就労・日常生活状況
裏面には、【障害認定日】と【現在】の就労と日常生活の状況を書く欄があります。これはどちらかでいいのか、または両方書くのかは人それぞれ違いますので、どこを書けばいいのかが分かればあとはそんなに難しくありません。
その前に障害認定日の説明だけしておきますね。障害認定日とは、初診から1年6ヶ月経過した日のことをいいます。例えば、平成10年10月10日が初診日の場合の障害認定日は、平成11年4月10日となります。これは自分で計算してみましょう。難しければ、窓口で尋ねてみてね。

あとは自分がどちらを記入するのかですが、下記を参考にしてみてください。
- 障害認定日から1年以内の申請の場合、上の【障害認定日】のみを記入。
- 障害認定日以後1年以上経過している場合で障害認定日請求の場合(遡及請求)は、【障害認定日】+【現在】を記入。
- 事後重症で請求する場合は、下部の【現在】のみを記入。
どこを書けばいいのか分からない場合は、窓口で聞いてみてくださいね。そこが分かれば書き方は共通ですので、さっそく順番にご紹介していきますね。
就労状況

質問の通りに書いていけばOK。障害認定日の日付、もしくは現在で就労をしている場合は【就労していた場合】を。就労していない場合は【就労していなかった場合】を書いていきます。
特に【就労をしていた場合】の仕事中や仕事が終わった後の身体の調子について記入してください、の項目は枠は狭いのですが、できるだけ具体的にたくさん書きましょう。
日常生活状況

こちらに関しては、まず自分で各項目を4段階評価していきます。全部1だとさすがにマズいので、できるだけ厳しく付けていきましょう。そして『その項目がどうしてその評価なのか』をその下にある不便に感じたことを記入する枠に書いていくといいかと思います。
障害者手帳

ここは手持ちの障害者手帳について書くところです。当てはまる項目に〇をつけたり、等級を書いていきます。障害名に関しては、今回申請する障害年金の病名に合わせてもいいですが、主治医の先生に聞いてみてもいいでしょう。
ちなみに障害者手帳についての記事はこちらにまとめています。
先に障害年金を申請して、後から障害者手帳を取得する方も多いです。まだお持ちでない方は、これを機に検討してみてもいいかもしれません。メリットがたくさんありますよ。

最後の仕上げ

いよいよ最後の仕上げです。こちらに自分でサイン、もしくは代筆者がサインをすればOKです。
まとめ
どうでしたか? うまく書けましたでしょうか? だいぶ体力を使ったと思いますので、この後はしっかりと休んでくださいね。
申立書は本人さんがこれまでのつらさを主張できる唯一の書類です。障害年金は、本人さんの生活の基盤を支える大事な制度になりますので、無事に申請が通るようにアピールしていきましょう。
ひとりで大変な方は、社労士さんや通院先の精神保健福祉士に手伝ってもらうことをお勧めします。
もう少し申立書の書き方について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
主治医の診断書と照らし合わせないといけないポイントや、主治医の診断書をうまく書いてもらうためのコツをまとめています。もうひと工夫したい! という方はあわせて読んでみてください。

またよくありがちな書き方の注意点をまとめたNG集を書いてみました。あわせてご覧ください。

申立書添削サービスはじめました!
2018年7月14日より、申立書がある程度完成された精神の方を対象とした、有料制の申立書の添削サービスをはじめました。
直接お会いする形ではなく、メールでのやりとりをさせていただきます。
顔の見えないやり取りになりますので、サービスの概要や注意書きをよくお読みになり、ご希望の方がいましたらお気軽にお申し込みください。数量が限られていますので、売り切れとなってしまった場合はご了承ください。
それではこちらのページからどうぞ。