今のストレス社会において、精神科、心療内科の位置付けというのはだんだん上がってきており、需要も大変増えている現状があります。
しかしそんな中まだまだ敷居の高さを感じる方や、偏見の目も多く、なかなか早期の発見に繋がらないケースも多くいらっしゃいます。
こころの問題とは目に見えるものではないため、本当は具合か悪いはずなのに『まだいける』『甘えちゃいけない』などと十分傷ついているはずの自分のこころに鞭打って無理をしてしまい、最終的には入院治療を余儀なくされる方も珍しくはありません。
精神科、心療内科の治療のポイントはやはり早期発見・早期治療です。形として見えるものでないからこそ、受診や相談のタイミングはかなり難しいものです。今回はそんな曖昧さを『見える化』し、今現在困っている方が早期に治療を開始できる追い風になれればと考えています。
そこで、どんな症状が出てきたら受診、相談を考えればいいのかをまとめてみました。それでは早速いってみましょう。
仕事への影響
まずは精神的な症状が仕事にどんな影響を与えているかで判断します。
まずは箇条書きにしていくつか書き出してみますので、参考にしてみてくださいね。
- 仕事に集中できない。
- 朝起きると仕事に行きたくないと強く思う。
- ミスが増えた。
- 周りから怒られることが増えた。
- 物事を覚えることができなくなった。
- コミュニケーションがうまくとれなくなった。
- 会社を遅刻するようになった。
- 会社を休むようになった。
いかがでしょうか? いくつか当てはまる項目はありましたか?
これらは『いやまだこれくらい…』と思いながら見るのではなく、自分のこころに正直に向き合いながら振り返ってみてくださいね。
仕事という社会性が発揮される場面なので、ミスが増えたり精神的に具合が悪くなることはひとつの目安になります。
それでは次に日常生活の方を見てみましょう。
日常生活への影響
日常生活とは、自分のスタイルや文化、こだわりが遠慮なく発揮される場面が大変多いですね。
そんな日常生活への影響をいくつかピックアップしてみます。
- 食生活の乱れ(暴飲暴食、過食拒食を含む)。
- 拒食、過食、嘔吐。
- ご飯を食べても味を感じない。
- 外に出られず、引きこもりがち。
- 気力が湧かず常に横になっている。
- 家族や友人とのコミュニケーションがおっくう。
- 掃除、洗濯などの家事ができない。
- 生活リズムが乱れている(不眠、昼夜逆転など)。
- お金を使い過ぎてしまう。
- 趣味や好きなことへの欲がなくなってきた。
いかかでしょうか。当てはまることはありましたか?
日常生活とはその人それぞれの生活の基盤を表しています。食生活、家事、お金など、どれも生活するには欠かすことのできないものだと思います。
それらが疎かになってしまう、やらなきゃいけないことは分かっているけど体が動かない、という方は何らかの精神疾患を発症している、もしくは発症する前のサインかもしれません。
生活にどれだけ影響しているか
精神疾患とは目に見えるものではありません。だからこそ基準や線引きが曖昧なところがあります。
そんな時のセルフチェック方法としてまず考えたいのが、精神的な症状が生活にどれだけ影響しているか、ということです。これまでいくつか上げてきた例がそうです。精神的に体調を崩し、出来ていたこと、本来であれば出来ることができなくなってしまうことを目安とします。
様々なストレス発散方法を試したけど、上記のようにの日常生活に影響が出てしまっている、という方は要注意です。
中には自分では判断がしにくい、もしくは『いやいやこれくらい甘えだ』と思っている方もたくさんいらっしゃると思います。そんな方は、周りの声を参考にしてみましょう。
『最近疲れてない?』『頑張り過ぎてない?』『ミスが増えたね』などなど。自分では見えない自分の姿を、家族、職場の上司や同僚、恋人、友人などはよく見ているものです。
その言葉はあなたを心配して言ってくれている言葉です。聞く耳持たずではなく、話を聞いてみてください。
しかし仕事面では、周りに迷惑を掛けてしまうという理由で会社を休めず無理をしてしまう方もいらっしゃいますね。親や上司に相談しても『みんなしんどいんだからこれくらい頑張りなさい』と、あなただけがしんどいんじゃないんだよ、という思想をぶつける方もいます。
内科や外科にはすぐにかかるようにと言う人も、精神科となると『あそこはやめとけ』と頑なに拒否をする方もいますね。
逆にそれが一枚の分厚い壁となってしまい、なかなか精神科へ受診できず、結果的に症状を悪化させてしまうこともあり得るのです。
精神科の治療内容について詳しいことが知りたい方は『精神科ってどんな治療をしているの?』を参考にしてみてくださいね。
一番恐れなければならないのは自殺
日本の自殺率をご存知ですか? 日本の自殺率は現在世界で見ると第6位です。自殺大国とも呼ばれています。交通事故で亡くなる方の約5倍の自殺者がいるという現状があります。
自殺して亡くなる方のほとんどの理由が、うつ病をはじめとする精神的な症状ばかりです。
交通事故や病気、ケガはどんなにこちらが注意していても、発生するときには発生してしまいます。しかし自殺は防ぐことができるものです。
『まだ大丈夫だから』『うちの子は精神障害者なんかじゃありませんから』ではなく、一度精神科医に相談にいきましょう。
今の症状を話してもらい、精神的な症状を少しでも和らげるように薬を飲むことを提案されたり、もしくは一時的な休職を勧められるかもしれませんが、それらは本人さんの命を守るために必要不可欠なことでもあるのです。死んでしまった後に後悔してもどうしようもありません。
医療機関以外の相談先
それでも中には精神科、心療内科(薬での治療)の前に他にできることをやってみたいという方もいるかもしれません。
そんな方には下記の機関に相談することもお勧めします。
市区役所、役場(行政)
まずはお住まいの地域の役所です。ここには『障害福祉課』など『障害』や『地域』、『福祉』などのワードがついた相談窓口が存在します。直接出向くことがしんどいという方はお電話でもいいかもしれません。
今の状況や気持ちなどを話して頂くと、然るべき相談先を教えてくれる場合もあります。それは病院かもしれませんし、地域の相談機関かもしれませんが、とりあえずという意味で役所の担当者に相談してみるのもひとつの手段です。
カウンセリングルーム
地域にはカウンセリングルームを運営しているカウンセラーさんたちがたくさんいます。病院やクリニックの法人の中で運営しているカウンセリングルームもあれば、完全に個人で独立して運営している方々もいます。
どちらでもいいかとは思いますが、法人の中で運営しているカウンセリングルームは『そこの病院、クリニックに通院している方のみ』というルールがあるかもしれませんので、そこはよく調べてからにしましょう。
料金は基本的に自費だと思ってください。保険診療、つまり保険証は使えません。料金形態はカウンセリングルームによって様々です。50分で10,000円のところもあれば、50分で18,000円なんてところもあります。
ちなみに中には自費で心理検査を行っているところもあります(医療機関で保険内で行っているところもあります)。
もし経済的に余裕があれば心理検査はぜひやってみてください。自分の考え方のクセや傾向、知能指数などがとても良く分かりますので、今後どのようにしていけばいいのか、どんな仕事が自分に合っているのかなどたくさんのことを知ることができます。
お近くの臨床心理士(カウンセラー)を探すなら、一般社団法人 日本臨床心理士会の【臨床心理士に出会うには】もしくは、全国のカウンセリングの口コミ・求人情報サイトがおすすめです。
その他相談先
その他地域によって様々な相談機関が存在します。それは市の委託を受けて運営しているものから、完全に個人でやていたり、株式会社で運営していたりと数多くの種類があると思います。
それぞれどのように支援をしてくれるのかはその機関によって違いますので、自分で相談しやすいところだと思えば連絡を取ってみるといいかもいしれません。
あなたのつらい気持ちを聞いてくれる、日本いのちの電話連盟というものがありますが、ずっと話し中でほとんど電話が繋がりません。それほど精神的なしんどさは深刻な状況なんですよね。
まとめ
精神疾患はまだまだ理解が得られないことも強く残っているこころの病気です。最近では『発達障害』という言葉が良く飛び交うようになり、仕事ができない=発達障害というレッテルを張られがちな傾向もあります。
私たちは『転んでけがをしたら絆創膏を貼る!』という万国共通の知識はあっても、こころの調子を崩した時の対処法は知らずに生活してきました。
教えてくれる人もいなければ、それが正解というハッキリとしたものがないため、どうすればいいのか分からないんですよね。でもそう思う気持ちは当たり前の事なんです。なにもおかしいことはありません。みんなそうだから。
目に見えないからこそ、どうすればいいのか分からないからこそ、相談しましょう。何もなければそれでいい。心配で不安なことがあれば、SOSを出しましょう。逃げることだって、時には大切です。
こころの専門職は本人さんの味方をしてくれる人たちばかりですよ。安心して頼ってください。